遺言に書けること
遺言によって定めることが可能な事項については法律で決められており、それ以外の事項を遺言に記載しても、それは法律上の効力を生じず事実的・訓示的な意味を有するにとどまります。
法定遺言事項は下記の一覧のとおりです。沢山ありますし法律用語も多いので分かりづらいと思いますが、重要な部分は下記一覧の下線を引いてある部分です。
さらにかみ砕いて申し上げると、
①「誰に」「どの財産を」「どれだけ」あげるのか。
② 遺言のとおり財産を移転させる手続を行う人(これを「遺言執行者」といいます)を誰にするか。
を決めることが最も重要です。
※ ②の遺言執行者を決めることは必須ではありませんが、遺言は書いただけではそのとおりに財産は移転しません。遺言執行者を決めないと遺言はいわゆる絵にかいた餅となり、遺言の執行手続に大幅な時間がかかります。
☆ 遺言執行者については,詳しくは 「遺言の執行」をご覧ください。
遺言に書けること(具体例)…遺言信託では財産に関する遺言の執行のみを行います。
・認知(民法781条2項)
・未成年後見人の指定(民法839条1項)
・未成年後見監督人の指定(民法848条)
・相続人の廃除又はその取消(民法893条、894条2項)
・祭祀主宰者の指定(民法897条)
・相続分の指定又は指定の委託(民法902条1項)
・特別受益の持戻しの免除(民法903条3項)
・遺産分割方法の指定又は指定の委託(民法908条)
・遺産分割の禁止(民法908条)
・相続人の担保責任の指定(民法914条)
・財産の処分すなわち遺贈(民法964条、 986条~1003条)
・遺言執行者の指定又は指定の委託(民法1006条)
・遺留分侵害額の負担方法の指定(民法1047条1項2号但書)
・信託の設定(信託法2条)
・財産の拠出(一般社団法人法158条2項)
(関連Q&A)
『Q8.遺言で養子縁組をできますか?』
『Q9.死亡保険金のことを遺言に書けますか?』
いかがでしたか。遺言にはどのようなことが書けるのかを理解することによって、自分がこれから書く遺言のイメージがしやすくなると思います。
もっとも、これまでご説明したことはあくまで一般論であり、遺言を書く方の個別的な事情によって、どのような内容の遺言にするべきかは変わってきます。
遺言は何回でも書き直しが出来ますが、効力が生じるのはその人の人生で一つだけ。
そんな大切な遺言を無駄にしないためにもぜひ当社にご相談ください。
- Q8.遺言で養子縁組をできますか?
私には子供がいません。そこで、私の兄の二男であるAに私の家を継いでもらいたいと考えています。例えば、「Aを養子に迎え、全財産を相続させる」という遺言を書こうかと思うのですが、法律上問題はないでしょうか。
遺言はどのようなことでもできるというものではなく、できることは法律で定められています。
一般的には財産の処分などが遺言でできますので、相続人でない方にも財産をお渡しすることが可能です。
また、家族関係に関する行為としては「認知(ある人を自分の子供であると認めること)」や、「廃除(ある人の相続権を剥奪すること。ただし、遺言に加え、家庭裁判所の審判を得る必要があります)」ができます。ご質問いただいた養子縁組については、遺言でできることとしては定められておらず、そもそも養子縁組するためには養親になる方と養子になる方の合意が必要であるため、「○○を養子に迎える」との遺言を書かれても法的な効力はありません。
そのため、Aが養子、つまり相続人となるかどうか分からない状況では、遺言書には以下のように記載するのが望ましいと考えられます。
「遺言者は、遺言者が相続開始時に有する一切の財産を、Aに相続させ、または遺贈する」
- Q9.死亡保険金のことを遺言に書けますか?
私は、自宅不動産と預金2000万円を保有しています。この他に、私を契約者兼被保険者とし、妻を死亡保険金の受取人とする生命保険に加入しています。この度、遺言を作ることにしましたが、この死亡保険金と遺言の関係はどのようになりますか?
死亡保険金は受取人固有の財産とされておりますので、被相続人(遺言者)を契約者兼被保険者、相続人などを受取人とする死亡保険金は、遺言の対象とはなりません。
したがって、ご質問の死亡保険金については、遺言とは関係なく、受取人である妻が受け取ることになります。なお、ご質問の場合と異なり、被相続人(遺言者)を契約者とし、被相続人以外の者(配偶者や子・孫の場合が多いです)を被保険者とする生命保険契約については、遺言の対象である遺産となる可能性がありますので、注意が必要です。