遺留分
誰かが亡くなったときは、遺言がなければ法定相続人が遺産分割協議を行って遺産を受け継ぐこととなります。
しかし、遺言が作られていたり生前に財産の大部分が贈与されていたりすると、法定相続人であっても十分な遺産を受け取れなくなることがあります。
例えば、家族関係が父母と長男、二男のケースで父親が死亡したときは、母と長男、二男にそれぞれ相続権がありますが、父親が長男に全部の遺産を相続させる遺言を書いていたら母と二男は法定相続人であるにもかかわらず、父親の遺産をもらえなくなってしまいます。
このようなときに母や二男が主張できるのが「遺留分」です。
1 遺留分とは、一定の範囲の法定相続人に認められる、最低限の遺産を確保するための権利をいいます。
2 遺留分の割合は、原則として法定相続分の2分の1です。
3 遺留分を絶対に主張されない方法はありませんが、なるべく主張されないように遺言の書き方を工夫することや遺留分が主張されても支払う金額を抑える方法はあります。
(関連Q&A『Q14.遺留分を請求されないためにどういうことができますか?』)
4 遺留分減殺請求権(遺留分侵害額請求権)の行使期間は、遺留分権利者が相続があったことと遺留分侵害があったことを知ったときから1年以内です(ただし、相続の開始から10年以内という期間制限もあります)。
(関連Q&A『Q15.遺留分請求権の行使可能な期間に制限はありますか?』)
各相続人の法定相続分と遺留分は下の表の通りとなります。
いかがでしたか。
遺留分とはどういうものかを理解することによって、自分がこれから書く遺言のイメージがしやすくなると思います。
もっとも、これまでご説明したことはあくまで一般論であり、遺言を書く方の個別的な事情によって、どのような内容の遺言にするべきか変わってきます。
- Q14.遺留分を請求されないためにどういうことができますか?
今まで老後の面倒を一生懸命看てくれた長女に財産を全部あげたいのですが、長男には遺留分があると聞きました。
私が亡くなった後に、私の財産のために姉弟間でもめてほしくありません。
長男が遺留分を主張しないようするためには、どのような遺言を書けばいいでしょうか?
遺留分は遺言を書く方の権利ではなく、あくまで相続人となる方のための制度です。
そのため、遺言を書く方のご生前に相続人となる方の遺留分を強制的に放棄させることなどはできません。しかし、遺留分をなるべく主張されないように工夫して遺言を書くことや、遺留分を主張されてもその金額をできる限り小さくする方法をとれる可能性はあります。
このような遺留分対策は遺言を書く方の個別的な事情によって変わってくるため、専門家に相談することをお勧めいたします。
- Q15.遺留分請求権の行使可能な期間に制限はありますか?
母が亡くなってから半年が経過しようとしています。
姉に対して遺留分請求権(※)を行使したいと考えていますが、仕事が忙しくてなかなか時間が取れません。
遺留分請求権は時効にかかったりしないのでしょうか。
遺留分請求権の行使期間制限はありますか。
※2019年6月30日以前に開始した相続の場合:遺留分減殺請求権
2019年7月1日以降に開始した相続の場合:遺留分侵害額請求権といいます。遺留分権利者が相続があったことと遺留分侵害があったことを知ったときから1年以内(ただし、相続の開始から10年以内)に遺留分請求権を行使しなければ、この権利は時効にかかり消滅します。
この1年の期間制限は消滅時効の規定、10年の期間制限は除斥期間の規定と解釈されています。除斥期間というのは消滅時効とは異なり、当事者による援用は不要で、かつ中断という制度がありません。
したがって、遺留分請求権は遅くとも相続開始後10年間の期間経過により当然に消滅することになります。